化学調味料を敵だと思ったことはない
化学調味料を敵だと思ったことはない。コンビニのお菓子も、お弁当も、お惣菜も食べる。裏の表示を見て、

化学調味料を敵だと思ったことはない。
コンビニのお菓子も、お弁当も、お惣菜も食べる。
裏の表示を見て、
「アミノ酸等。なるほど、貴様か」
と棚に戻したりはしない。
戻していたら何も買えないし、
お世話になっている。
しかし、すごく良い肉や魚や野菜に、
何かを振りかけようとする手には、
ちょっと待った、と言いたくなる。
良い肉なら、まず塩で一口。
牛にも、自己紹介の時間が必要だ。
お寿司の醤油が出汁醤油になっている店でも、
私は少し落ち着かなくなる。
いや、目の前に魚がいる。
この魚の味を知りたいのに、
なぜ別の旨みを応援に呼ぶのだ。
まだ一口も食べていない。
この鯛を、もう少し信用してやってほしい。
わかりやすい旨みには、即効性がある。
口に入れた瞬間、
「はい、おいしいですよ」
と答えが出る。
でも、良い素材のおいしさは、
最初の一秒で全部は出てこない。
噛む。脂がほどける。
香りが抜けて、あとから甘みがやってくる。
あれ、まだおいしい。
さっきと少し違う。
その時間が、私は好きなのだ。
強い旨みや甘みで先に満たされると、
その変化を追いにくくなる。
本人が面白い話を始めたのに、
隣の人が大声で、
「この人、面白いんですよ!」
と説明し続けている感じがする。
わかったから、本人に話させてくれ。
もちろん、量と使い方の問題ではある。
塩だって、かけすぎれば塩の味しかしない。
タレのついた肉で白いごはんを食べる幸福も、
私はよく知っている。
ただ、良い肉を買ってきたのなら、
最初の一口くらいは、その肉の味を知りたい。
全部同じタレの味にしてしまったら、
財布だけが違いを知っていることになる。
音楽でも、似たことがある。
派手で太い音に仕上げたら、
曲全体の陰影や、ダイナミズムが
感じられなくなってしまう。
パッと聴きはかっこいいけれど、
一曲通して聴くと疲れてしまう。
肉にも、そういうことがある。
旨くするな、と言っているのではない。
もう少し時間をかけて味わいたい。
自分から、その奥深さに入っていきたい。
最初の一口で、
全部わかった気にさせないでほしい。
良い肉を焼く。塩を少し振る。
口に入れて、しばらく黙る。
今は、この肉の歌を聴いている。
調味料には、少し黙っていてほしい。
聴き飽きない30分、
を意識した調理方法で作りました。
【全曲フル試聴・歌詞付き】
『何者にもならず』|Full Album
https://youtu.be/PbRArgRtsSU