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蕎麦を食べたい

蕎麦を食べたい。ときどき、そういう欲望が猛烈にやってくる。お腹が空いた、とは少し違う。

蕎麦を食べたい。
ときどき、そういう欲望が猛烈にやってくる。
お腹が空いた、とは少し違う。
蕎麦のなんらかの成分を、
身体全体が欲している気がする。
何の成分かは知らない。
とにかく、つゆにつけて、ずるっとすすりたい。
家で食べるなら、
私はセブンイレブンの乾麺が気に入っている。
いろんなメーカーのものを茹でたけれど、値段とおいしさを考えると、結局ここに戻ってくる。
問題は、おかずだ。

蕎麦には天ぷら。
わかっている。
とてもよくわかっている。
しかし、
コンビニで天ぷらはなかなか手に入らない。
大きめのスーパーに行けば惣菜売り場にあるけれど、
天ぷらは揚げたてからの落差が大きい。
さっきまで、さぞおいしかったのだろう。
そんな過去の栄光を感じながら食べることになる。
では、自分で揚げるか。
私は蕎麦を茹でたかっただけである。
天ぷらの調理のハードルの高さよ…。

考えてみると、
蕎麦だけでは少しクールすぎるのだ。
合間に、油っぽいものが欲しい。
油をひと口食べて、蕎麦に戻る。
するとまた、蕎麦がうまい。
この往復が欲しいのだ。
それならソーセージを焼けばいい。
ハンバーグでもいい。
焼肉なんて、油も旨味も申し分ない。
ところが、それでは違う。
ソーセージを食べると、口の中がソーセージになる。
ハンバーグを食べると、夕食がハンバーグになる。
焼肉にいたっては、蕎麦に戻っても、
焼肉の記憶しか残らない。

私は脂が欲しいのであって、
主役を交代してほしいわけではない。
今日、会いたかったのは蕎麦なのだ。
そこへ肉がやってきて、
「俺様が来てやったぜ」
と真ん中に座る。
うまい。
うまいのだが、今日はあなたの会ではない。
その点、天ぷらはたいしたものだ。
油の満足感があって、
茄子なら茄子、海老なら海老のおいしさもある。
それでいて、蕎麦をもうひと口すすりたくなる。
ちゃんと蕎麦に話を戻してくれる。
天つゆと蕎麦つゆに、
醤油と出汁という共通点があるのも大きいのだろう。
長年、隣に座っているだけのことはある。

いま気になっているのは、
カリッと焼いた油揚げに、
大根おろしという組み合わせだ。
醤油を少し。
香ばしさと油っぽさがあって、
大根おろしでさっぱりもする。
これなら、蕎麦の隣にいてくれそうだ。
次は油揚げを買っておこう。