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AIで作った音楽には、人間味がない?

「AIで作った音楽には、人間味がない」そう言う人の制作画面に、MIDIノートがびっしり並んでいることがある。

「AIで作った音楽には、人間味がない」
そう言う人の制作画面に、
MIDIノートがびっしり並んでいることがある。
ちなみに、私の画面もだいたい同じである。
ドラムもベースもピアノも、
MIDIもAIも生演奏も、同じ画面に並んでいる。
私たちは、ずいぶん前から機械と一緒に音楽を作ってきた。
それでも人間味を感じるのは、
音の選び方や組み合わせ方に、
作った人の感覚が表れるからだ。

MIDIでは、
人間が音符を入力し、機械に演奏させる。
AIには、
メロディや伴奏を考えるところから頼むこともできる。
でも、AIが作った伴奏に自分でメロディをつけたり、
何度も作り直して、
気に入った部分だけ使ったりもできる。
AIを使ったというだけでは、
その人が何を考え、
どう工夫したのかまではわからない。
それなのに、
「自動演奏も自動補正もいい。でもAIの曲は偽物」
と決めてしまうのは、少し不思議だ。
人間は、
自分が使い慣れた道具には、
ずいぶん寛大なのである。

実際にAIを使うと、面白いことが起きる。
長い文章で詳しく説明したら、
かえって面白くない曲が出てくることがある。
ジャンルも楽器もテンポも、ちゃんと指示どおり。
でも、作りたかったのはこれだったっけ?
頭の中には、
まだ言葉にできない音や雰囲気がある。
知っているジャンル名や楽器名で説明するうちに、
どこかで聴いたような曲へ近づいてしまうのだ。
そんなときは、細かい注文をいったんやめて、
「この曲で、いちばん伝えたいこと」だけを短く伝えてみる。
短い指示でも、その一言を決めるまでには、
人間として、制作者としてずいぶん考えている。

建築家に、
「午後、窓辺でぼんやりお茶を飲める家にしたい」
と頼むのに少し似ている。
部屋の配置や窓の正確な寸法、床材の種類などは提案してもらい、
「窓はもう少し大きく」
「この部屋は気持ちよさそうだ」
と、一緒に考えていく。
AIでも、出てきた曲を聴いて、
気に入った部分を残し、違う部分を直す。
自分では思いつかなかったフレーズを、
どう生かすか考えることもある。
この選び方や直し方にも、人間の創作がある。
一万個の音符を入力しても、
創造性が一万倍になるわけではない。
一行の指示でも、
創造性が一行分しかないわけではない。

AIの学習データや著作権には、
きちんと議論すべき問題がある。
ただ、AIを使ったというだけで、
作った人の思いや工夫まで、
なかったことにはできないと思う。
「この音が好きだ」
「ここは譲れない」
そうやって選ぶ人の好みは、
機械が鳴らす音にも表れる。

私自身、MIDIが誕生した頃から、
打ち込みで作品を作ってきた。
全編バンドの生演奏で作ったアルバムも、
何枚もある。
そして今回は、AIもかなり使った。
しかし、
一曲にかける労力が減ったという実感はない。
自分で打ち込むか。
プロのスタジオミュージシャンに頼むか。
AIを使うか。
どの作り方でも、作りたい音楽のイメージがあり、
その音になるまで、何度も聴いて、直していく。
イメージを形にできるなら、
道具は何でもいい。
「もう少し、こうなんだよな」
と、いつまでもやっている。
道具はずいぶん進歩したのに、
そこに座っている人間は、
相変わらずである。

そうしてできたアルバムが、
Sugarfields『何者にもならず』。
全10曲を、歌詞とともに、
最初から最後までフルで聴けます。
画面を見れば歌詞カード。
見なくても、
一枚のアルバムとして静かに流れていきます。
お茶を飲んでいる間にでも、
どうぞ。
【全曲フル試聴・歌詞付き】
Sugarfields『何者にもならず』⁠
https://youtu.be/PbRArgRtsSU